中学校道徳教科書採択:各地の動き

 『しんぶん赤旗』2018年7月29日付が、中学校道徳教科書採択に関する市民の取り組みについて、『戦争肯定するような教科書使わせない 道徳教科化 「日本教科書」ノー 各地で行動』とする記事にしている。

 2018年8月末までに採択予定となっている中学校道徳教科書では、「日本教科書」の内容が特にひどいと批判がある。

 同記事では、名古屋市・奈良県・横浜市での取り組みを紹介している。

名古屋市

 名古屋市では7月20日の教育委員会会議で、教育出版が採択された。

 「個人的には、安倍晋三首相のハワイ演説が載っている日本教科書が一番いい」と発言した教育委員もいたものの、現場の声を尊重すべきという意見も出され、無記名投票で教育出版に決まったという。

 教育委員会会議では、市民から404通の意見や感想が寄せられたと報告があったものの、意見や感想の中身については公開されなかった。

奈良県(奈良市・橿原市)

 奈良県では市民団体が、奈良市と橿原市の教育委員会に対し、道徳教科書に関する申し入れをおこなったことが紹介されている。

 申し入れをおこなった市民団体によると、日本教科書は教科書の教材配置についても異例だと指摘している。

 道徳の指導要領では、内容をA(主として自分自身に関すること)・B(主として人とのかかわりに関すること)・C(主として集団や社会とのかかわりに関すること)・D(主として生命や自然、崇高なものとのかかわりに関すること)の4つの大項目に分類している。他の7社は4項目の内容を適宜織り交ぜて教材配置しているが、日本教科書はそのままA・B・C・Dを順番に並べていて、1学期はA項目だけを学習する形になり、教師が教えづらい・生徒が学習しづらい構成となっていると指摘している。

 自己評価をさせることについても、「3年生は高校受験に向けて、先生が望むような自己評価を書いてしまうのではないか」という指摘もされている。

 奈良市では8月2日午後1時より、また橿原市では8月9日午後2時より、教科書採択がおこなわれることになっている。

横浜市

 横浜市では、8月1日午後2時開始予定の教育委員会会議で採択予定となっている。

 市民団体などが、日本教科書・教育出版・廣済堂あかつきの3社を採択しないよう申し入れをおこなったことが紹介されている。また、現場の声を採択に反映する仕組みの復活や、展示会での展示方法改善などについても申し入れたことが紹介されている。

 2018年度には、教育委員会会議の映像中継や、直前まで知らされていなかった採択日の事前公表など、一定の改善がみられた。一方で、傍聴定員の制限や、教員や保護者の意見を採択に反映しないなどの課題も残っているとしている。

私見

 名古屋市で日本教科書が採択されなかったのは一安心ではある。

 しかし名古屋市で採択された教育出版についても、日本教科書ほど露骨ではないというだけで同じような傾向がみられ、また生徒に到達度を数値で自己評価させる仕組みとなっている。日本教科書が採択されなかったからといっても一安心というわけではないことが気がかりである。

 また今後横浜市をはじめ、全国各地で採択がおこなわれることになる。

 2015年の中学校教科書で社会科に育鵬社を採択した地域をはじめとして、動向が気になる地域は全国的に多数ある。一方でこれまで「ノーマーク」気味だった地域でもおかしな教科書の採択の可能性があるのではないかと指摘される例も生まれている。

 学校現場や保護者の声を反映させるような教科書採択になるかどうか、各地で注視していきたい。