大阪市北部児相問題を再び持ち出した大阪市長:事実経過は?

 大阪市の児童相談所増設問題。従来は市全域に1ヶ所だった児童相談所を、市内を北部・中部・南部の3ブロックに分けて3ヶ所に増設する計画が進められている。

 その際に市北部を担当する児童相談所「北部こども相談センター」の設置について、大阪市や市政与党・大阪維新の会が、市が区分所有するタワーマンションの低層階に設置する「タワマン児相」に固執したことで、設置時期が遅れた問題が生じた。

 結果的には、「タワマン児相」を断念し、東淀川区の元小学校分校跡地に建設されることになった。

 吉村洋文大阪市長は2018年6月8日、この問題を蒸し返し、「住民が児童相談所を迷惑施設扱いしたから、反対運動が起き、設置時期が遅れた」かのようなデマをツイッターで流した。

大阪市児童相談所増設問題をめぐる経過

 大阪市北部(北区、都島区、福島区、西淀川区、淀川区、東淀川区、旭区の7行政区)を管轄する予定の児童相談所の計画。

 大阪市は、北区南部にあるタワーマンション低層階の元市施設跡地を改装して使う「タワマン児相」の計画を打ち出した。このタワマンの場所は、元々は市立中学校の敷地だった経緯もあり、大阪市が低層階を区分所有している。

 当該場所にはかつて、市の老人福祉施設が入居していたが、施設が廃止されて空き家となっていた。

 北部児相設置でこのマンションが候補地として選ばれたことで、住民からの反対を招いたことそのものは事実ではある。

 しかしそれは、「自分の近所に迷惑施設が来るのは反対」という、いわゆるNIMBY問題(Not In My Back Yard)という一方的な発想に押し込められるものではない。

 住民からの意見は、住民の立場だけではなく、施設利用者の側にも配慮し、また自分のマンションや近所だけにとどまらずに大阪市全体の街づくりのあり方を踏まえた反対意見だといってよい。

 住民側からは、「利用者と住民との動線が分けられる設計となっていないことで、住民だけでなく利用者のプライバシーにもかかわる」「日照が十分に保障される設計ではないことや、運動場がないことで、子どもの生活環境としても良くない」という意見が出されたと聞く。

 またこのタワマンは管轄予定区域の南端に立地するうえ、既存の中央区森ノ宮の児童相談所と2kmほどの比較的近い場所にある、さらには人口や相談件数が多い地域からも離れていることで、非効率ではないかといった疑問も指摘された。

 候補地としては他にも、人口や相談件数が多い地域に、駅からの距離もこのタワマンと大差なく、広い運動場を設置できるような未利用市有地があるのに、そこを第二候補地以下に扱って、なぜ「タワマン児相」にこだわるのかという疑問も出された。

 市議からは市会での質問の中で、第二候補地とされた場所を改修して使用する方が、「タワマン児相」よりも設置費用は安く抑えられるのではないかとする指摘もされた。

 しかし、これらの指摘を経てもなお、「タワマン児相」に固執し続けた上、最終的には区分所有法の関係として断念に追い込まれたという経緯である。

なぜ今になってこの話を蒸し返すのか

 これらの経緯は、2017年までに解決した話であり、児童相談所については最終的には東淀川区の別の場所に新たな候補地を選定して決定し、現在建設中となっている。

 では、なぜ今になって、吉村市長はこの話を蒸し返すのか。「おそらくこれが理由かもしれない」と推測されるような内容があった。

 2018年6月、東京都での虐待死事件が大きく報道されている。それに関して、大阪市では児童虐待対策をやっているアピールにしようとしたものだと思われる。

 吉村市長のツイッターでは他にも、児童虐待問題に関する話題にもいくつか触れている。

 しかし「児童虐待対策に積極的に取り組む大阪市・維新市政」というアピールには、北部児相・マンション児相問題は都合が悪いということにもなるのだろう。そのために、北部児相問題に関する経過をねじ曲げて、一方的なデマを蒸し返したものだと思われる。

 これは、維新市政の失策をごまかそうとするという問題だけにとどまらず、マンション住民への攻撃・風評被害にもあたるのではないか。