桜宮高校事件:橋下徹の卑劣な自己正当化

 2012年末に発生した大阪市立桜宮高校での「体罰」自殺事件。この事件について、当時大阪市長だった橋下徹が「生徒も共犯者」扱いするような言動を繰り返し、同校の生徒への中傷や入試中止などの状況を生んだ。

 橋下徹は2018年1月24日付の『PRESIDENT Online』(ウェブ)で、『橋下徹「体罰をやめさせる僕の最終手段」 「暴力容認」の催眠術をこう解いた』と題して、事件の言い訳を図る文章を出している。

 全文約1万1600字は有料メールマガジンで配信され、うち概要約2700字分がウェブで無料配信されている。

 無料で読める部分だけでも、橋下は案の定、桜宮高校事件で自らのとった態度を正当化している。

 「組織を抜本的に立て直すというのであれば、いったんその組織活動は停止にしなければならない」として入試中止を正当化したうえで、入試中止が教育委員会で承認されなかった場合は出直し市長選挙に打って出る構想があったと明らかにしている。

 そして「徹底した改革によって桜宮高校は甦った」と自画自賛している。

桜宮高校事件:橋下の行為による混乱

 橋下は元々「体罰」上等論者である。しかし桜宮高校事件では「体罰」批判の世論が噴きあがったことで、表向きは「体罰」否定の立場と印象づける言動をした。しかし橋下の主張をていねいに分析すると、実際は「体罰」肯定の態度をとり続けていた。

 そして事件に乗じて、橋下にとってのもう一つの持論である「行政からの教育への介入・統制体制の強化」をおこなおうと、「次年度の入試中止」「予算をつけない」などをちらつかせた。

 入試中止については、事件が起きたのは2012年12月、遺族との調整を経て事案公表に至ったのが2013年1月初めという状況の下で、2013年4月入学学年について、体育系学科の募集・入学試験を中止するとしたものである。しかも、教育委員会が従わない場合には予算をつけないとちらつかせるなどもした。

 橋下の態度で、事件に何の責任もない中学生を犠牲にすることになった。中学生は、受験に向けて準備していたのに、受験の直前で突然受験先が失われ、志望変更を余儀なくされるということになった。このことには中学校校長会、弁護士会、PTA、市会議員など幅広い分野から抗議が起きた。

 しかも橋下は自己正当化のため、「入試中止に反対する人物は、教師の暴力を容認している」と短絡的に結びつけて中傷をおこなった。そもそも「入試中止」と「教師の暴力」は全く別の次元の話であり、暴力反対だからこそ入試中止にも反対するという主張も多くあったにもかかわらず、橋下は一方的に結びつけて騒いだものである。

 それらの橋下の行為の結果、橋下に扇動された形になった心ない人間の手によって、「同校生徒も入試中止に疑問を示した。ということは、同校生徒というだけで暴力事件の共犯」かのように扱う中傷や嫌がらせが相次ぐような形になった。

 さらに橋下は、市長として桜宮高校を訪問し全校集会で講話した際、生徒に対して「十字架を背負うべき」と言い放った。

大阪市は事件の民事訴訟で何を主張したか

 桜宮高校事件では、自殺した生徒に対して「体罰」・暴力行為を繰り返したバスケットボール部の顧問教諭は懲戒免職を受け、刑事事件としても執行猶予付の有罪判決が確定した。

 遺族側は元顧問教諭個人と大阪市を相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を起こした。

 しかし大阪市は、「体罰」と自殺との因果関係を認めずに争う方針を示した。遺族が民事訴訟を提訴した2013年12月当時の大阪市長は、橋下徹だった。

 民事訴訟では一審判決が出るまで争った。2016年2月に「体罰」と自殺との因果関係を認定する地裁判決が出た。大阪市は判決に控訴しない方針を決めたことで判決が確定した。

 民事訴訟の経過ひとつとっても、橋下が事件にまともに向き合っていない、目立つところだけはパフォーマンス的に動いて不要な混乱を拡大させただけで、実際はまともに対応していないということがわかる。

橋下の言い分はデマ

 以上のように橋下の言い分は、事実関係をねじ曲げて自己正当化するためのデマである。

 いわゆる「体罰」事件、教師による生徒への暴力事件については、二度とそのような暴力・人権侵害行為が起きないように再発防止策をとり、また被害に遭った生徒や関係者への適切な事後対応が必要になってくることはいうまでもない。

 しかし橋下やその同調者が桜宮高校事件を口実にしておこなった行為は、「体罰」・暴力事件の根絶や再発防止にも全くつながらないうえ、首長や行政の政治介入によって新たな困難を作り出して傷を拡大したことになる。